2021年2月17日、医療従事者へのcovid-19ワクチン接種が始まりました。
コロナを契機に、一般の皆さんもワクチンそのものへの関心が高まっています。
しかし、それは良い結果にも悪い結果にも繋がっているように感じます。あまりにもで杜撰なデマ情報が多い。特に一部のSNSは検索に情報検疫がされていないため、情報が間違っていてもフォロワーが多ければ拡散されてしまう、「フォロワー数絶対主義」になってるんです。
私自身は感染症の専門家ではありませんが、科学論文を扱う科学者として、一般向けにこの記事を書きました。(文章チェックをしてくださった友人たちに感謝!!!)
よくわからんものを怖がるのは正常な反応
コロナワクチンについては連日報道されているけれども、その実態についてはよくわからん、というのが正直な反応ですよね。
よくわからないものは怖くて当然です。でもよくわからんものを過度に恐れていては、せっかくの利益を失うことになるかもしれません。
というわけで、今回は今まで尋ねられたワクチンについての質問にまとめて答えていこうと思います。
Q. ワクチン療法ってそもそもなに?
A. 人の免疫を間借りする治療法です
人には外からの病原菌に対して抵抗する機能がついてます。これを免疫といいます。
免疫が侵入者に使う武器を抗体と呼びます。この武器(抗体)はオーダーメイドで、新しい敵がくるとその都度作って使用します。
さてせっかく作ったこの武器(抗体)、破棄してしまうのはもったいない。そこで免疫機能はこの武器の設計図を記録に残しておきます。この記録が残ってると、次回同じ病原体が襲来してもすぐに武器を作ることができるようになります。これを獲得免疫といいます。
さて、ワクチンはこの人間に備わったメモリー機能を利用した治療法(予防法)です。
ワクチン自体は「無毒化したウィルスのパーツ」です。
これを体内に入れると、身体は病原菌だと判断して攻撃を開始、武器(抗体)を作ります。
しかし敵は無毒化しているのですぐに退治できます。
「なんだこいつ、弱いな」「でも一応記憶しておくか」
と免疫は念の為、この病原体の記録を取っておきます。このようにワクチンは、人の免疫機能に感染の擬似体験をさせて、次回以降、本物のウィルスが来た時でもすぐに対応できるように準備させるものなのです。
(獲得免疫はアニメ/漫画の『はたらく細胞』でも登場してます。とてもわかりやすいのでおすすめ)
ワクチンを使えない人も存在します。それは正常な免疫機能を持っていない人です。
先天的もしくは後天的に免疫不全になっている方の中には獲得免疫機能が備わっていない人がいます。この方々は自分の力で武器(抗体)を作ることができない体質なので、ワクチンを打っても効果が期待できないんです。
さて、ワクチンが重要となるケースがあります。
それは 特効薬がない場合です。
今回のコロナウィルスのように、特効薬がない場合、人の体内で治療法を獲得できるワクチンは大きな意味を持ちます。コロナに限らず、現在ワクチン接種を実施されている病原体も、多くは有効な治療法がないものなんです。だからこそこのワクチン製造が「切り札」として考えられているんですね。
Q. 副反応が色々言われてるけど怖くない?
A. 副反応は報告されてるけど、それを効果が上回るから使ってるのよ
ワクチンを使うか使わないかの判断は使うことで得られる利益と、使うことの危険性とのバランスで決まります。
ワクチンが体内で意図しない働きをした場合、副反応といいます。
(副作用はお薬が効きすぎて別の効果が出た時の表現なのでワクチンでは別表現をします)
副反応は「腕が腫れる」「頭痛」「発熱」などの軽い症状のものがほとんどですが、極一部にアレルギー反応を起こして重症化する人がいます。
ワクチンを使う目的は、「重症化して死亡するのを減らしたい」というものです。ワクチンを使えば、死亡する数は減らせますが、一方で副反応でたくさん人が亡くなってしまうと使う意味がありません。
では具体的にどのように利益と危険性を考えているのか、モデルを使って説明します。
登場する計算式は小学6年生で学ぶ比例の計算のみです。
目標は重症化して死亡するのを減らしたい
今回はアメリカでのコロナ感染者データを使ってモデルケースを考えてみました。
100万人の都市がいます。
100万人のうち8%の人がコロナ感染者になります。8万人です。
8万人のうち50%の人は無症状、残り50%は症状が出るので、4万人が症状がでます。
4万人のうち、14%が重症化するので5600人が重症化することになります。
ワクチンの副反応は、そもそもワクチンを使ってないので0人です。
合計で5600人が重症化しました。
さて、ワクチンを使った場合はどうでしょうか。
100万人の都市がいます。そのうち8%の人がコロナ検査で陽性者になるのですが、コロナワクチンは陽性者を95%減らす効果があります。そのためコロナ陽性者が4000人まで減らしてくれるのです。
4000人のうち50%が発症し、2000人に症状が出ます。
この2000人の中から14%が重症化する…のですがワクチンはこの人数も90%減らしてくれます。
つまり重症化は28人まで減ります。
一方、ワクチンの副反応で重症化する可能性は10万人に2件。ですので100万人で20人です。
これらを合計すると48人が重症化になりました。
このモデルから推測すると、ワクチンを打つ場合、打たない方と比較して重症者を1%未満に減らす効果が期待できそうです。
現実にはもう少し複雑な要素が絡み合い、違った数値が出ると思いますが、基本的には「どっちの方法が助かる人数が多いのか」で判断されます。
副反応は当然どんなワクチンでも存在します。しかしそれを加味してもワクチンを使った方が助かる人数が多いのであれば、ワクチンを使おう、という決断になるのです。
今回はワクチンの基本についてお話しました。後半にも続きます。
参照:
エッセンシャル免疫学 第三版
Israel Covid vaccine data shows extremely low rate of infections
Uptodate: Coronavirus disease 2019 (COVID-19): Clinical features
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