飲酒に適量は存在しない

みなさん普段からどれほど飲まれていますか?

スポーツのあとのビールがたまらない!という方も多いのではないでしょうか。

今日は飲酒とアスリートの関係を最新の知見を交えながらご紹介します。

 

少量のアルコールは血管の病気を予防する

酒は百薬の長と言われており、実際にそれを裏付ける研究もありました。

少量のアルコールは心筋梗塞などの心血管系の病気発症を改善し、飲まない人よりも死亡率が低いということが国外、国内の研究で明らかにされています。

 

 

 

厚生省HPより抜粋

しかし、本当にそうなのか。お酒は飲んだ方が健康なのか。長年研究者の中で疑問視されていました。

ジャーナルで報告された衝撃の研究

2018年にLancetで発表された研究は医学界に衝撃が走りました。この研究では、「お酒は飲間ない方が結局長生き」という結論が出たのです。

確かに、少量のアルコールは心血管系の病気発症を多少改善します。しかし、心臓の病気が減っても、悪性腫瘍や肝臓疾患などの他の病気は、少量でも飲酒を続けていれば発症が増えてしまうので、結果として死亡率は上がってしまうのです。

“少量の飲酒”は難しい

また、飲酒の落とし穴は、適量で辞めることが難しいところもあります。今までの基準ですと、1日のアルコール量は20g以内に留めることが推奨されていました。この20g、計算してみるとわかりますが、案外多くない量です。

ビールだと500ml, 日本酒だと1合程度、7%ハイボールでは350ml程度です。女性だとさらに少ない量が推奨されているので、お酒は1日1杯強に留めた方が良いという指標でした。

しかし、この論文ではさらに厳格になり「死亡率をあげない量は週にアルコール100g以下」と示されいます。

アルコール100gってどれくらいでしょうか。
例えばハイボール350ml一缶でアルコール量は20g。つまり毎日1缶飲んでいればもう100gを超過しています。最近流行りのストロ◯グゼロはより危険で、500ml1缶で36g, 3缶飲めばもう1週間分の量です。

みなさんはどうですか?毎日缶ビールを晩酌に….という方は、新しい指標ではすでに飲み過ぎです。

アスリートは総じて飲兵衛が多い

単刀直入にいうと、アスリートは飲酒量が多くなりがちなことは既に様々な研究で示されています。

理由としては諸説ありますが、アスリートにとって飲酒は「試合のプレッシャーを間際らす」「練習へのご褒美」と考えられているためと思われます。

みなさんも実感としてありませんか?
頑張ったロングライドのあとはビールが美味い。このために練習を頑張っている、などなど。

練習へのモチベーションを保つために、適度な飲酒をすることは否定はしません。しかし、ついつい飲みすぎてしまい、パフォーマンスに影響が出てしまうようでは、本末転倒です。

チームスポーツでは飲みすぎる傾向に

トップアスリートの大学生を対象とした研究では、飲酒量は競技のパフォーマンスレベル、勝利へのこだわりと相関関係があり、つまり強豪校のチームでは総じて飲酒量が高いことがわかっています。

また興味深いことに、チームスポーツでは飲酒量が増えると自分の能力に対する肯定感が増幅する一方で、個人スポーツでは逆に減少することがわかっています。つまり個人競技では、「飲まない方が自分の自信へつながる」ということです。

なぜチームスポーツでこのような結果になるのかについて様々な議論がありますが、一因として、「飲酒が他者に自分の優位性を示す手段」として使われていることがあるんじゃないかと考えられます。

沢山飲める人=頼り甲斐のある人?

たくさん飲める人=強い人という固定概念はこの時代でもまだ残っています。(個人的にはとても時代錯誤だなと思ってます)

確かにチームスポーツにおいては、飲み会でチームの一体感が生まれたり、リーダーシップを誇示できたりすることによってプラスのメリットがあるかもしれません。

しかし、結果として飲酒量が増え、パフォーマンスが落ちてしまえば元も子もありません。

沢山飲むことで自分の優位性を誇示したい気持ちはわかりますが、正直に申しますと沢山飲める人がかっこいいという考えはもう時代錯誤です。今の時代では自分の適量で楽しむ大人がかっこいいんです。

 

参照:

厚生労働省HP, 飲酒とJカーブ
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-001.html

Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016, The Lancet, 1015-1035, SEPTEMBER 22, 2018

Relationship between General and Sport-Related Drinking Motives and Athlete Alcohol Use and Problems, Addict Behav. 2013 Dec;38(12):2930-6

Alcohol, athletic performance and recovery, Nutrients. 2010 Aug; 2(8): 781–789.

Alcohol Consumption, Athlete Identity, and Happiness Among Student Sportspeople as a Function of Sport-Type
Jin Zhou, et al, Alcohol Alcohol 2015 Sep;50(5):617-23


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“飲酒に適量は存在しない” への1件のコメント

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