今日は体格の個人差についてお話ししようと思います。体格の話にかかせないのが、膵臓から出るホルモン、インスリンです。
インスリンは、血糖値を下げるホルモンだと理解されている方も多いかもしれませんが、より正確に表現すると、血液から糖分を身体に引き込むホルモンです。食事をし、吸収された糖は血液中に入ります。しかし、これだけではヒトは糖を利用できません。インスリンが分泌されることで、糖が血液から細胞へ移動し、エネルギーとして使用できるようになるのです。いわば、食べた物を血肉へと変えていくためのホルモンです。
じゃあインスリンがでなくなるとどうなるのか。
ヒトは太れなくなります。
栄養をとっても、血液の中をただようだけで、細胞側に引き込めないからです。血液の中をただよう糖は、吸収されず、ふわふわとただよい、最終的にはおしっことして排泄されます。これが糖尿病の原理であり、名前の由来でもあります。
血液中の糖は、金平糖のようなとげとげした形をイメージしてみてください。血管の中をただよう間に、そのトゲトゲが血管の内側の壁を傷つけていきます。血管は細ければより傷つきやすいし、血糖が血液中をただよう時間が長ければよりダメージが大きくなります。糖尿病に罹患する期間が長くなると、細い血管がダメージを 受けて潰れてしまう、具体的には、目や神経を栄養する血管がダメになってしまいます。
じゃあ、インスリンの分泌がしっかりしているとどうなるんでしょうか。端的に言うと、太りやすいです。でもこれは、脂肪もつきやすく、筋肉もつきやすいということ。筋肉の成長にも、インスリン分泌による細胞への糖吸収が必要だからです。
インスリン分泌の量や速さは個人差があります。傾向としては、日本人含むアジア人は、欧米人と比べてインスリン分泌が弱いと言われています。
参照1)より
欧米人で驚くほど太った人などをテレビでみたことはありませんか?
あれは、彼らの膵臓が強靭な結果、あそこまで太れるのであって、我々が同じ食事をすると、太る前に膵臓が根をあげて病気になります。日本人でも力士など、かなり体格が良い方はいらっしゃいますが、全ての人が沢山食べればあの体型になれる訳ではありません。あの体格は恵まれたインスリン分泌に支えられているからです。
もし、日本人で100kgを超えるような方がいたら…その方の膵臓は才能に溢れています。だってインスリン分泌がとても良いタイプなので、筋トレすると筋肉の成長もとても早いと予想されるからです。私は診察で巨漢の患者さんに出会うと、「貴方の膵臓には可能性がつまっているんですよ!是非筋トレしましょう!」と思わず握手してしまいます。
肥満の方、そのお腹は脂肪の塊じゃありません。ポテンシャルの塊です。ぜひ運動しましょう。
参照1):Ethnic differences in the relationship between insulin sensitivity and insulin response: a systematic review and meta-analysis, Keiichi Kodama et al. Diabetes Care
. 2013 Jun;36(6):1789-96
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